貴方はTRPGをする人ですか? 或いは、TRPGに興味がある人ですか?

 そうではないならば、以下の文は読むだけ無駄です。とっとと帰りましょう。





 さて、一応前置きをした上で本題に入る(以下は『だ・である調』で書かせていただく。こっちの方が性に合ってるんで)。

 タイトルにあるとおり、これはTRPGゲーマーにGMをすることを勧めるコラムだ。個人的には、GMをしないTRPGゲーマーは須く『初心者ゲーマー』だと考えている。

 いや、さすがに初心者は言い過ぎかも知れない。だが、残念ながらわざわざ訂正する気が起きない。少なくとも、GMをやらない人のほとんどが『初心者ゲーマー』と言って差し支えない類のゲーマーであることは、確信している。

 仮に30年間ずっとTRPGをしてきた人がいたとして、GM経験が皆無であれば『初心者』と言って良いものかどうかは、微妙だとは思うが、少なくとも『ベテラン』と名乗るには何かが足りないと考えられるのではなかろうか。例え、どれだけ多くのシステムで遊んでいようと。



 さて、上記の様なことを少々突っ込んで考えてみながら、GMをすることを啓蒙しようと目論んでいる訳だが、その前に私事を語らせていただく。………と言うか、今回のコラムは半分が私事で埋まっている。



 もし、貴方がこのサイトのリプレイを読んでいるならば、私が比較的GMを多くやる人だと思っているかも知れない。これは、紛れもない事実だ。私は一年間で大体40回程度はGMをやる。特に数えた訳じゃないが、大体そんなもんだろう。

 私がGMをやるきっかけになったのは、大学に入ったからだった。

 当時、とある大学のサークル(TRPGとは関係ない)に入った私は、意気投合した友人とTRPGをやることになった。

 私以外は全員が初心者、ならば、私がGMをやるのが当然の流れだ。友人達がルールに慣れるまでは、ほとんどGMばかりやっていた。恐らく、最初の半年は8割ぐらいがGMだっただろう。

 GMをやって、私は気付いた。PLとして参加していた頃の自分が如何に愚かな行動を取っていたかを。

 そして、最近になってGMをするセッションの割合が半分ぐらいになる頃には、GMをするのが楽しくて仕方なくなっていた。いや、別にPLをするのが嫌になったわけじゃないが、GMの楽しみ方が分かってきたのだ。

 同時に、自分自身のTRPG技術や、TRPGに対する考え方も、昔よりは洗練されるようになってきたと実感している(その割には、相も変わらずPLをする時に妙な行動を取るのは、単純に私の人格の問題だろう。………一応反省はしてるんだが、こればかりは中々直せない)。

 少なくとも、私がGM経験を積むことによって変化したのは事実だ。



 さて、一方で私は、大学に入ってからコンベンションにも行くようになった。

 始めの頃はGM参加が多かったが、自分のマスタリングに限界を感じ、一旦PL参加中心にしようと思って、以降はPLでの参加が多くなった。そこで、いくつか面白い発見をした。

 GM参加している人には、当然、すごいゲーマーがいる。幾人かは、私がマスタリングの手本にしようと思うようなセッションを運営した。

 一方で、GMとしては未熟なゲーマーも多かった。少々傲慢な言い方になるが、有体に言って私よりも下手な人もいた。まぁ、当然の話だ。その人たちが、私よりもGM経験が少ないのは見ていれば大体分かる。

 でも、そういう人でも、私よりも一部の技術では勝っている場合があった。私がコンベンションGMをしなくなったのは、時間管理がうまくいかない場合が多かったからなのだが、『GMをやったことはあまりありません』と言う人が、私よりもうまく時間調節ができていたのを見たこともある。

 ただ、ひとつ言える事として、GM参加する人の半数では、TRPGを良く学んでいる人たちだった。半数というのは適当な数字ではない。本当に、五分五分ぐらいだ。

 一方で、PL参加しかしない人たちは、若年層を中心にTRPGの遊び方が………どこかズレていた。

 より具体的に言うなら、TRPGの遊び方が多様であることを分かっていなかったり、PCとPLの区別がつかなかったりする人が多いのだ。中にはあからさまにGMや他のPLへの迷惑行為をする人もいた(『あからさまに』じゃなければ、中級者でもベテランでも失敗することはあるかも知れない―――と言うか、私は結構失敗する―――が、意図している感があるのが問題なのだ)。

 特に多いのは、ウケを取ろうとしてキャラクターに妙な行動を取らせ、結果として他のPLやGMに迷惑をかけると言うパターンだ(ウケが取れればまだ救いはあるのだが…皆まで言うまい)。また、自分の好みのキャラクターを演出する時や、世界観などに対する固定観念を持っていたりする人も多い。これも、迷惑行為になり得るだろう。

 そして、そのような行為を取る人の中に、明らかにGM経験がない、またはマトモにGMをやっていないことが分かる発言をする人がいるのである。『私の決めたキャラ設定では云々』とか言って、自キャラの迷惑行為を正当化する人などは、見たことがあるという人も多いだろう。



 さて、ここまで読んで、迷惑行為とGMをすることに何の因果関係があるのか分からない人もいるかも知れない。その点を解説しよう。

 これまた私事になるのだが、既に述べた通り、私はGMをやるようになって、ゲーム感が大きく変化した。

 正直に言うと、先の『私の決めたキャラ設定では云々』とか言って、自キャラの迷惑行為を正当化するというのは、昔の私もやっていた。しかも結構頻繁に。

 これが、GMをやるようになって、不合理であることが分かったのである。そんなことにこだわりを持っても、一時の身勝手な自己満足が得られるだけで、何の利益もないのである。

 GMをやるようになるまで、そんな簡単なことにすら気付けなかった自分の馬鹿さ加減にはウンザリするところもある。だが、自分がそんなダメPLだったおかげで、GMをする時に迷惑PLをあしらうのは結構うまくできると自信がある。こんな、誰か読む人がいるかどうかも分からないコラムを書くのも、別に自己反省とかじゃなく、せっかくの私の特技を生かせないかと思ってのことである。

 ただし、今回は細かいマスタリングの話については書かない。その前に、GMをやるべきだということを伝える必要があるからだ。



 最早、書く必要はないかもしれないが、PLばかりしてGMをやらない人は、『自分の行為がGMにとって迷惑なのかそうでないのかが分からない』ところに問題があるというのが結論だ。何故なら、GM経験がないが故に、GMの視点でものを見ることが困難だからだ。

 GMを実際にやってみて、その上で、どのようなPLになるのが他者の利益になるのかを考えて欲しい。

 実際、迷惑PLがいる場合、怒りの矛先の7割はそのPLに向かうが、残りの3割はそれを止めないGMに向かう、ということも珍しくはない。

 だからこそ、GMとして多くの経験を積むことが大切だ。GMをすることで、自分がどのようなゲーマーになるべきかという指標が見えてくるのだ。

 それが、ギチギチの戦闘やカツカツのダンジョンアタックを楽しむキビシイ修羅の道なのか、感動的なストーリーやキャラのカッコ良さ重視のお気楽な散歩道なのか、或いは、GMが提示した事件の謎をひたすら知恵を絞って解き明かそうとするストイックな道なき道なのかは、どうでもいい。全部の遊び方を楽しめれば理想的だが、肌に合わないことだってあるだろう。

 ともあれ、自分に合ったプレイスタイルさえ見つかれば、『それを基準に』PLへの注意を促すことができる。セッション崩壊の原因のひとつに、PLへの注意の基準がはっきりしないせいで、GMが戸惑ってしまうというのがあるからだ。

 コンベンションでGMをする場合、卓紹介の段階で、その時のセッションのプレイの方向性をはっきりさせておけば、それを論拠にPLの暴走を止めることもできる。また、キャラクター作成段階で、作って欲しい/作って欲しくないキャラクターのイメージを予め伝えておけば、後のトラブルへの対策になる。

 ただし、問題児PLの多くは、こうした諸注意を無視・曲解して、妙な行動を取る場合が多い。その辺の細かい対策は、機会があれば語らせてもらおう。



 とにかく、まずはGMをやってみることだ。

 GMの視点で見ると、他のPLと普段の自分のPLの行動や考え方・価値基準に大きな差があるということがはっきりと分かる。

 また、PLの行動を、何とかして自分のマスタリングの範囲内で制御可能な方向に向けるかに苦心する内に、一見多岐に渡るように見えるPLの趣向にも、何らかのパターンのようなものが見えてくるようになる。それは、そのまま自分というPLが何を望んでTRPGをやっているのかが分かるという、自己分析にも繋がる。



 自分が、GMとして、或いはPLとして、何を望んでいるのかということが分かっていないTRPGゲーマーは、結構いるように思える。

 それが分からずに、その時の気分や勘違い気味の自己主張でTRPGを遊ぼうとする人が『初心者』だ。その気分や自己主張がGMの提示する卓の方向性とズレが生じると、最悪の場合セッションが崩壊する。

 『中級者』は自分が何を望んでいるかも理解できるし、自分の望みがどの程度まで受け入れられるかが、セッション開始後のかなり早い段階で掴み取ることができる。ただ、ゲームにのめり込んで他者への気遣いを忘れることもあるし、逆に気を使いすぎて自分が楽しむチャンスを逸してしまうこともあるかも知れない。最悪の場合、ゲームはただの馴れ合いに成り下がる。特に、いつも同じメンバーで遊んでいると、そういうことも多くなるだろう。

 そして、『上級者』『ベテラン』ゲーマーというのは、自分の望みだけでなく、他人のことを考えるだけの十分な余裕があるとともに、卓のプレイスタイルに合わせて良いゲームの達成に力を注げる人ということになるだろう(ここで言う良いゲームとは、参加者全員が、セッションをゲームとして楽しめることを指しており、与えられたミッションに成功することなどは関係ない)。まぁ、この定義での『ベテラン』に関しては、そんな人はほとんど世の中にいないと考えても差し支えないぐらいだろう。実際は、失敗の少ない『中級者』が『ベテラン』と呼ばれる。



 まずは、自分が何をしたいのかをはっきりさせる―――これが、TRPGを楽しむための最初の関門だ。超えるのは難しくはない。何度かGMをやればいい。

 最初から理想形の『ベテラン』を目指すのは、誰だってムリだ。いっそ夢物語と言ってもいい。だが、それを見据えることができるというのは、別に悪いことでもなんでもない。むしろ、良いTRPGゲーマーのひとつの在り方だと言えるだろう。

 そして、そのためには『初心者』のままではダメなのだ。自分の楽しみのために、他の誰かを犠牲にするしかないような、そんなゲーマーであってはならない。

 だからこそ、私はTRPGが好きな人に、GMをすることを勧めたい。

 面倒くさいとか自信がないとか理由をつけて、GMを避けるならそれはそれで勝手にすればいい。だが、そうではない人が、この文を読んだ人の中でひとりでもいることを私は望んでいる。




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